南アフリカ、増える略奪 怒れる人々 5週間のロックダウンを終えて

南アフリカは今日、5週間のナショナル・ロックダウン最終日を迎えました。

世界一厳しいロックダウン、新型コロナ感染抑制に一定の効果

「世界一厳しい」とされる南アのロックダウン。3月27日を境に僕たちの生活はがらっと変わりました。

  • 国境封鎖。
  • 外出は生活必需品の買い物、急を要する医療目的のみ可能。
  • エッセンシャルワーカー以外は一部例外を除き自宅勤務。
  • 家族、友人宅の訪問禁止。
  • 保育施設、学校閉鎖。
  • ジョギング、サイクリング、犬の散歩禁止。
  • 小売店は食料品、医薬品、生活必需品のみを販売。
  • 酒、タバコ販売禁止。
  • オンラインショッピング閉鎖。
  • レストラン、バー、ホテル封鎖。
  • テイクアウト、デリバリー禁止。

これに対して、

  • 南ア政府に実行可能なのか。
  • 本当に新型コロナ拡散抑制につながるのか。
  • 経済を完全に止めて、南ア社会はどうなってしまうのか。
  • 貧困層が持ちこたえられるのか。新型コロナの死者よりも飢えによる死者が多く出るのではないか。

など、懸念の声が多く挙がっていました。

幸い、南アの新型コロナウイルス新規感染者数推移は「5日で倍増」と「10日で倍増」の間を推移。PCR検査の実施件数は5〜6000/日を維持しています。共に、日本と比較しても悪くない水準です(南アの人工は約5800万人)。

ロックダウンは、新型コロナ感染抑制に一定の効果を挙げたと言えるでしょう。

ロックダウン、貧困層を直撃 店舗の襲撃・略奪も

一方で、社会生活との折り合いという観点では今もなお試行錯誤が続きます。

例えばロックダウン初日。ヨハネスブルグ最大規模のタウンシップ(旧黒人居住区)Alexandra(Alex)では、スーパーやショピングモールに人が殺到しました。Alex在住者のほとんどは低所得者層で貯蓄を持ちません。月末に給料や送金を受け取ったた多くの人が、この日一斉に買い物に出かけたのです。

「ブリキ板で建てた小屋に家族で住んでいるんだ。自宅待機なんてできる訳ないだろ?」。自宅待機が「要請」ではなく「義務」であっても、Alexの路上には人が溢れます。

テレビカメラを見て「俺テレビに写ってる!」と子どもたちが路上に出てきます。軍隊を一目見ようと外に出てきた人もいます。

タウンシップで社会的距離を保つことはとても困難です。

そしてロックダウン長期化を受けて、略奪・襲撃が始まりました。Cape Townで白昼堂々と酒屋が襲われるというこの映像は世界中に広く拡散しました。

ただし、これは氷山の一角に過ぎません。大手スーパー搬入の大型トレーラーが襲われたり、医療用マスク数万枚を運ぶトラックが襲撃されたり、スパザショップの商品が根こそぎ奪われたり。ロックダウンの長期化につれて、状況は日に日に悪化しています。今では教会までもが空き巣の被害にあっているそうです。

ロックダウン解除で暴力はなくなるのか?

5月1日から南アでは、ロックダウンの段階的な緩和が始まります。

新型コロナに伴う南アフリカのロックダウン、段階的な解除へ 国境封鎖は継続 タバコ解禁
南アフリカのナショナル・ロックダウンについて、5月1日からの段階的な解除に関する情報が配信されたので、適宜改行を入れながら共有します。 ●23日...

規制が緩み日常生活が戻った時に、南アから暴力はなくなるでしょうか? 残念ながらそうは思いません。

なぜかというと、襲撃・略奪は決して今に始まったことではないからです。

例えば外国人排斥、通称ゼノフォビア。南アのタウンシップで、外国人(主にアフリカ諸国出身者やパキスタン人)所有のスパザショップを標的とした暴力事件がしばしば発生します。

南アの失業率が50%とも言われます。「生活苦の原因は外国人にある」と考える層が、やり場のない怒りを自分たちよりも少し成功している外国人に対してぶつけるのです。

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学校を燃やす事件も目に付きます。これは、行政サービスの向上を求める住民が要求を通すために学校を人質に取る手法です。

行政サービスを求める一方で学校を破壊するという論理は全く理解できません。しかし、ここまで極端な行動で注目を集めない限り政府の重い腰は上がらない現実もあります。

「南アフリカの参政権は、長い闘争の末に勝ち取ったもの(アパルトヘイト中は参政権が限定的だった)。自らの主張実現のために、直接行動に訴える方法は民主主義の危機だ。ただし、立場言いにくいが、実際問題として破壊的な行動が政府の行動を呼び起こすことに成功している。最後の手段としての直接行動を頭ごなしに否定することは、その人々が直面している課題を考えると難しい」と語る識者も見られます。

暴力との付き合いはこれからも続く

言うまでもなく、これまで例として挙げてきた襲撃、略奪、破壊は全て犯罪です。社会の雰囲気に乗じた便乗的な行動もあるでしょう。

一方で南アには残念ながら、暴力に訴えなければ物事が動かないという一面があります。暴力を一定容認する空気もあります。

南ア政府の無能・堕落っぷりは、コロナ禍でも随所に現れています。

  • 届かない緊急食料配布(そりゃそうだ、年に1回の教科書配布だってできないんだから)
  • 与党関係者による緊急食料の着服、支持者への優先的な融通
  • 警察によるロックダウン中のタバコ、酒の不法流通幇助
  • 世界中の航空会社が危機に瀕するこの期に及んで南ア航空再建に執着

責任ある政府が誕生しない限り新型コロナが収束しても人々の怒りは収まらず、残念ながら南アの暴力が下火になることはないでしょう。

一方で南アが暴力一辺倒かというとそうではなく、この状況下でもコミュニティやNGOによる草の根の支援は脈々と動いています。大変勇気づけられます。この辺りの話は長くなるので、また別の機会に。

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