NHK国際報道2020 南アフリカ・学校まで略奪 南ア在住者として一言

南ア関係者界隈で話題になっているNHK国際報道2020。ようやく視聴できました。

下記、番組WEBサイトに掲載されている紹介文です。

5週間のロックダウンを続ける南アフリカでは、その期限を30日に迎えるが、感染者が予想以上に増えていて、延長が検討されている。しかし、経済的な打撃は特に貧困層に顕著に表れている。貧しい黒人が暮らす地区では、収入が途絶えた人々による略奪が続き、その対象が商店から学校へと移っている。悪質なことに、証拠を隠滅するために放火され、200近い学校が破壊された。

出典:国際報道2020 南アフリカ・学校まで略奪~新型コロナで社会崩壊寸前

国際報道2020 南アフリカ・学校まで略奪~新型コロナで社会崩壊寸前 番組内容の要約

10分程の短い特集ですので不要かもしれませんが、ざっくり要約すると番組の内容は次のような感じでしたでしょうか。

  • 南アでは新型コロナの感染者数が拡大中。しかし、ある程度の感染拡大を覚悟の上でロックダウン緩和、経済活動再開を決断した。
  • ロックダウンから1ヵ月を経て貧困者は窮地にある。国民の4人に1人の財布が空で食料を買えない。
  • 商店や輸送トラックへの襲撃が発生。全国180以上の学校が略奪の被害に。
  • ロックダウン中に治安部隊(警察、南ア国軍)による人権侵害多数報告あり。9人が死亡。人々は反発も、南ア国軍の大幅増員決定。
  • 富裕層とは異なり貧困層のロックダウン耐性は低い。格差を放置したツケが顕になっている。

映像としては、ケープタウンで酒屋や輸送トラックが襲われる様子、ヨハネスブルグのタウンシップで冷蔵庫が空っぽの家族の生活っぷり、治安部隊によって銃殺された市民の葬式、などショッキングな印象を与える映像が多く使われました。

報道内容は事実 ただし編集・構成が不適切

視聴を終えて感じたことです。

まず、報道内容自体は事実だったと思われます。

  • ケープタウンで店舗襲撃事件、ありました。
  • 輸送トラックの襲撃事件、ありました。
  • 食料パッケージがいつまでも届かないコミュニティでの抗議行動は各地で発生しており、中には暴力に発展したものもありました。
  • 学校、襲撃の対象になっています。
  • 治安部隊の暴走によって一般市民が命を落とす痛ましい事件、ありました。

南ア関係の報道では稀に、全く関係ない過去の暴動の映像が足元の事件映像として誤って使われることがあります。しかしこの度の番組で紹介された映像は、ロックダウン中のもので間違いがなさそうです。

ただし残念ながら、編集に大きな問題があります。

例えばケープタウンでの店舗襲撃事件。番組では触れられていませんでしたが、これ襲撃されたのは酒屋です。食うに困った南ア人の行動例として紹介するにはいささか不適切です。

また、トラックや学校襲撃に関しては、転売が目的かマスク等PPEの輸送トラックが襲われる事案が複数発生している点も考慮して、組織的犯罪という一面があることも伝えるべきです。

インパクトがある複数の事件映像を文脈を無視して寄せ集めて、「貧困層が困窮」というタグでくくる。さらには「南アフリカ・学校まで略奪~新型コロナで社会崩壊寸前」というタイトルでお化粧して、南ア全体が崩壊の危機に瀕しているかのような印象を与えたことは明らかなミスリードだったと思います。

新型コロナは世界中が日々、手探りで対策に取り組んでいる課題です。南アも例外なく試行錯誤を続けている中で、ステレオタイプ的な「アフリカ」の枠に押し込める形で報道がなされたことを非常に残念に思います。

せっかくの現場取材 貧困層に焦点を当てての深掘りもできたのでは

いみじくもNHKの別府ヨハネスブルグ支局長自身が番組内で指摘していたように、ロックダウンから生活に受ける影響の大小は「持てるもの」と「持たざるもの」で大きく異なります。南ア社会全体の実態を示したいのだとすれば、少なくとも富裕層、中間層、貧困層それぞれに言及すべきです。

番組作成にあたっては、タウンシップでの家庭インタビューやSoshanguveの学校訪問が行われたようです。例えば、これら取材での見聞を足がかりに貧困層への影響に焦点を当てて、さらに深掘りする番組作りもできたのではないでしょうか。

食料パッケージの支給遅延や横領、外国人追い返し問題、学校休校長期化下でデジタルデバイドがさらに拡大する教育格差、慈善団体やNGOによる支援の広がりなど、材料はいくらでも転がっています。

この記事がNHKや別府支局長に届くとは思いませんが、次回報道での挽回に期待します。

あとがき

なお念のため申し上げておきますと、僕は新型コロナに対する南ア政府の一連の対応を全面的に肯定している訳ではありません。

Ramaphosa大統領による党内の反対を押し切っての早期ロックダウン断行やPCR検査拡大方針は支持しますが、治安部隊の強権的な立ちふるまい、行政の非効率的な運営や横領(今に始まったことではありませんが)、あるいはセーフティネットからの外国人排除等には憤りを覚えます。

南ア市民・在住者に対しても同様です。コミュニティで今この瞬間も動いている草の根の支援活動の広がりや学校再開に向けたPTAでのアクティブな議論等に勇気づけられる一方で、番組でも紹介された略奪行為あるいは、ソーシャルディスタンシングを台無しにする身勝手な行動には怖さや虚しさを感じます。

このように南アに対して色々と考えることはありつつも番組内容に対して一言申し上げたいと思い、こうして筆を執った次第です。

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