村で出会ったスパザショップを経営するお兄ちゃんの心意気にちょっと感動したというお話です。
ちょっと遠出をして、トーヤンドー(Thohoyandou)方面へ行ってきた。トーヤンドーは、アパルトヘイト下の南アフリカで設置されていたベンダ(Venda)ホームランド(黒人居住区)の首都が置かれていた街で、ベンダ語(この辺りで話されている南アの公用語の1つ)で「象の頭」という意味。街の入口では象の巨大な像が出迎えてくれる。
ちなみにこの像(象?)は結構迫力があるからぜひ見てもらいたいんだけれど、交差点のど真ん中に置かれているので、写真がなかなかうまく撮れないのが困りもの。次こそは、頑張って写真を撮ってきます。
僕が今回行ったのはトーヤンドーではなくて、少し手前の手前のダバナ(Davhana)という村。隣接する2ヵ村と合わせても1200世帯に満たない田舎の小さな、小さな村です。水は共有の水道まで汲みに行く必要があって、しかも使えるのは1日おき。電気はプリペイド式のものが使えるけれど、ほとんど家庭では薪を使って料理をしている。そんな場所だ。
村の中をうろうろと歩いている時に知り合ったのが、スパザショップ(売店)を経営するダニエルだ。歳は聞かなかったからわからないけど、たぶんまだ20代じゃないかな。「おーい、ちょっと寄ってけよ!」と声をかけてくれた。
ところでスパザショップとは何か。スパザショップとは、村やタウンシップでよく見かける小さな売店のこと。アパルトヘイト時代は、タウンシップでの商業活動が禁止されていた。そんな中でライセンスを持たずに自宅で「違法に」営業していた小さな商店が、ズールー語(南アの公用語の1つ)で「臨時」「偽物(見せかけ)」の意味を持つスパザ(Spaza)ショップと呼ばれたことにルーツがあるという。南アには少なくとも10万件のスパザショップがあると言われている。
さて、ダニエルの話だ。お店の金網越しに「どこから来たんだ?」「ここで何をしているんだ?」「家族は?」など、一通りの質問に答えたら、次は僕が質問する番だ。「自分でお店を経営しているの?」特に深く考えずに聞いてみたところ、彼はこう答えてくれた。
「この村には昼からお酒を飲んだくれたり、ドラッグにハマっている人がいる。俺はああいうのは嫌いだ。もしも仕事がなくて一日中何もすることがなかったら、俺もそうなってしまうかもしれない。でも、仕事に打ち込めば大丈夫だ。地域の役にも立っている。もっとこのビジネスを広げたいと思っている」
確かに村には、昼間からお酒に溺れている人がいる。仕事がない彼ら(男性の場合が多い)の中にはグラント(年齢や健康状態によって政府から支払われるお金)をお酒に変えてしまう人がいる。さらに困ったことに、家族のグラントを使い切ってしまう人もいる。そんな暗い話ばかりを耳にしてきたので、彼は本当にカッコよく見えた。
南アは世界一とも言われる格差社会だ。持たざる者の置かれた状況は厳しい。いつまで経っても変わらない状況に絶望してあきらめたり、自暴自棄になってしまうのはある程度仕方がないように思える。でも、まっすぐに前を向いて頑張っている人だっている。
働き者がいればナマケモノもいるのは、日本人も南アフリカ人も変わらないと思う。「あいつらはみんなナマケモノ」。そんな思い込みは捨てて、彼のような人を応援したい。
※この記事は「地球の歩き方特派員ブログ」に投稿したものです。
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