南アフリカで7月に再導入された新型コロナ対策での禁酒措置が、しばらく続きそうな気配が漂ってきました。
8週間の禁酒で外傷患者約5万人の削減効果 保健医療の専門家の試算
南アの保健医療の専門組織SA Medical Research Council(SAMRC)が、政府のHealth ministerial advisory committee(MAC)に対して行ったImpact on alcohol on health services in South Africaというプレゼンテーションを行いました。
プレゼンテーションの中で、注目を集めたのはこのスライドです。
SAMRCは次のように述べています。
- 数理モデルによると、レベル3ロックダウン下で禁酒を行うと、4週間の場合は22,212件、8週間では49,550件の外傷件数を南ア全土で削減できる。
- 49,550件という数字は、全ての外傷件数に対する18%、飲酒由来の外傷の36%だが、逼迫する医療現場にとって大きな助けとなる。
- 仮に約5万件の外傷件数が削減された場合、新型コロナ患者の普通病棟での治療キャパシティ17,555日分、あるいは、新型コロナ患者のICUでの治療キャパシティ12,947日分を創出できる。
禁酒をどの程度行うと、新型コロナ対策として医療機関にどのような好影響を及ぼせるのか、具体的な数字を伴う提言には信憑性があります。これを受けて「禁酒は8週間続くのでは」との見方が広がっているという訳です。
なお今のところ、南ア政府から国民に対して禁酒期間に関するアナウンス行われていません。
コロナ禍を南アの飲酒カルチャー再考のきっかけに?
ところで興味深いことにSAMRCは、「禁酒措置は手段であって目的ではない」として、飲酒由来の外傷件数を削減するための禁酒に代わる選択肢として、生産量・販売量調整や広告規制、飲酒運転規制の強化、依存症患者へのサポート体制強化などを組み合わせる方法も示しています。
しかし、複数施策の組み合わせは結果予測がより難しく、また、それぞれの施策に対してステークホルダーが反発し司法の場での争いも予想されるため、足元の新型コロナという危機への対応としては禁酒がより適当としています。ただしこれを契機にあらためて、南アの飲酒カルチャーが抱える問題に取り組んでいく必要がある、と結びました。
確かに、世界有数のワイン産地でありながら、南アの飲酒カルチャーは必ずしも褒められたものではなし。飲酒運転が未だに認められている現状にも直ちに手がつけられるべきです。
……それにしても8週間はちょっと長い、けど。
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