Black Lives Matterを日本語でどう表現するか、意外とむずかしい。
例えばですが、「黒人だって人間だ」はどうでしょうか。意訳ですが。
植民地主義や人種差別は、特定の対象を下等あるいは異質な存在として切り離すことで正当化できる訳で。いや、黒人も同じ人間だ、だから人間として扱え、というメッセージです。
Black Lives Matterへの連帯 “Black Friday”キャンペーン 南ア与党ANCらが呼びかけ
さて世界各地でBlack Lives Matterへの連帯が生まれる中で、南アでも与党ANC・南ア共産党・労組COSATUのいわゆる三者連合がキャンペーンを立ち上げました。“Black Friday”キャンペーンは、毎週金曜日に連帯の証として黒い何かの着用を呼びかけるものです。
ANCは言うまでもなく、南アの反アパルトヘイト運動を牽引した組織です。国際的な反人種差別運動への連帯自体は自然な行動といえます。
しかしANCは今や、1994年の第1回全人種参加選挙以来25年以上一貫して政権与党として内政を司ってきた政権与党です。そんなANCがBlack Lives Matterへの賛同を示す一方で自国の問題に正面から向き合わない姿勢に対して、南ア国内から疑問や怒りの声が聞かれます。
ANC、南ア国軍による市民殺害には強く行動せず
南アでは、3月27日の新型コロナ対策としてのロックダウン開始以来、治安当局(国軍と警察)の暴力によって10人以上が亡くなっています。最も有名になったCollins Khosa氏のケースは、家族や目撃者の証言から、酷い暴力の詳細が明らかになりつつあります。
- they poured beer on top of this head and on his body;
- one member of the SANDF held his hands behind his back, while the other choked him;
- they slammed him against the cement wall;
- they hit him with the butt of a machine gun;
- they kicked, slapped and punched him on his face, stomach and ribs, and
- they slammed him against the steel gate.
米国と南アでは社会構造が異なりますが、George Floyd氏とCollins Khosa氏には、両氏が共に社会的に弱い立場(※)に置かれており、権力によって殺されたという共通点があります。
しかしANCは、白人が殺したという表層だけを捉えてFloyd氏の事件に対して声を挙げる一方で、権力者による弱者への暴力という両者に共通する本質を見ることなく、Khosa氏の事件には正面から向き合いませんでした。
“Black Friday”キャンペーンを立ち上げたまさに同じ日に、ANC率いる南ア政府は「Khosa氏の死と国軍による暴力との関係性は見いだせず」との国軍からの調査報告書を受理し、内容を認めたのです(批判を受けて後に撤回)。
※南アでは白人と黒人を比較すると、黒人の方が治安当局からの暴力を受けるリスクがより高く、黒人の中ではタウンシップ等に住む貧困層より高リスクとされる。Khosa氏の事件は、ヨハネスブルグで最も古いタウンシップAlexandraで起こった。
ついに理念まで喪失 ANCが死んだ日
行政サービスの低下や汚職の蔓延、経済政策失敗等の政権与党としての実務能力の欠如に加えて、「アフリカ人の権利と自由獲得」という理念すら見失い、人種差別問題に対して表層的な対応を取るまでに落ちぶれたANC。
後世の南アの歴史教科書で”Black Friday”キャンペーン発足の日は、「ANCが死んだ日」として記録されることでしょう。
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