南アでは、Land expropriation without compensation(EWC)が話題です。
直訳すると、「無補償の土地収用」。格差是正のために、政府判断で土地を無補償で収容し、「Our people」に分配するというANC肝入りの政策です。
南アの国内政策論争なんぞ普段はなかなか日本のお茶の間で話題になるものではありませんが、米国トランプ大統領のTwitterで一気に知名度が向上しました。
I have asked Secretary of State @SecPompeo to closely study the South Africa land and farm seizures and expropriations and the large scale killing of farmers. “South African Government is now seizing land from white farmers.” @TuckerCarlson @FoxNews
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) 2018年8月23日
さて、EWC。憲法改正の必要有無、対象となる土地特定、収用後の所有者、分配対象、分配方法、収用された土地に紐づくローンはどうなる、など数々の論点があり議論は一向に収束の気配を見せません。
これに対して南アのリベラル系(自称)シンクタンクInstitute Of Race Relationsが最近発表したレポートが興味深い側面を切り取っていたので共有します。
EWCへの支持/不支持はは反対派が若干優勢
まずはそもそもEWCを支持するかどうか、という質問です。
EWCを「支持する」30%に対して「支持しない」は41%で、EWCに対しては不支持が支持を若干上回っているようです。
土地改革は必要、白人から土地を取り上げろ
次に、土地改革(EWCではなく)に関する質問です。
「わからない」と回答した2%を除くと、
「土地改革の必要なし」(17%)
「土地改革は必要、市場原理に基づいて行うべき」(22%)
「土地改革は必要、政府保有の土地を国民に分配すべき」(29% )
「土地改革は必要、白人の土地を無補償で取り上げるべき」(30%)
となっています。
南アでは人種差別的な発言はヘイトスピーチとして扱われ、場合によっては刑罰を受けることもありますが、ここでは露骨に白人を接収対象とする土地改革案が(わずかな差とはいえ)もっとも多くの支持を集めている点に注目です。
ただし、自分の身に降り掛かってきたら断固拒否!
最後に取り上げるのはこちらの質問です。
「自分自身/家族が住宅/土地を保有している土地がEWCの対象となった場合に、EWCに対してどのような姿勢を取りますか?」
回答中、協力的な姿勢を示したのはわずか9%で大多数といえる90%は反対の姿勢を示しました。
つまり、南ア人のEWCに対する姿勢を一言で表すと、こうなります。
EWCが他人に適用される場合は支持する。他方で、自分の身に降り掛かった場合には拒否する。
In short, the poll suggests that those who support the policy of expropriation without compensation do so only when it applies to other people; when it is applied to them, they reject it.
EWC推進が生み出すのはさらなる分断と憎悪、そして(今以上に)自己中心的な南ア人のメンタリティではないでしょうか。
大統領、どうかご再考のほど。
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