【書評】南ア・アパルトヘイト共和国(大月書店)

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黒人公民権運動に湧く1960年代の米国・ニューヨークを取材した「ハーレムの熱い日々」で有名な著者による、アパルトヘイト体制下の南アフリカ共和国(南ア)における2週間の体験に基づいたルポタージュです。

ハーレムと南アの対比は著者だからこその視点で興味深く、黒人居住区であるホームランド(当時)での取材記も面白く読み進めました。

しかし、僕にとっての一番の読みどころは、「日本人とアパルトヘイト」の章でした。当時「名誉白人」として優遇されていた日本人の一部(あるいは多く)が持っていた、南ア黒人への差別・侮蔑意識を具体的なエピソードとともに紹介するものです。

ヨハネスブルグの日本料理屋に黒人青年とともに訪れた著者は店主から入店を断られ、このように言われます。

私はここきて5年になる。他のアフリカの国にもいたし、日本でもアフリカの人たちとつきあった。でも、ここの黒ンボはちがう。ダメです。彼らをレストランに座らせたら、白人の客が来なくなる。それでは商売はできなくなる。

また、駐在員の次のような声も聞いたといいます。

アパルトヘイト、アパルトヘイトってマスコミの人は騒ぐけれど、ここの黒人は、モザンビークやザンビアなど他のアフリカの国よりずっといい生活をしていますよ。それに、この国の黒人が天下を取ったら、部族対立で分裂してしまいますよ。まだ頭の程度がね……

南アフリカは、資源も豊かだし、気候風土もいいし、定年退職したらここで老後を過ごしたいですね。ただし、白人政権が続いている限りですよ。

もちろん、すべての在南ア日本人がこのような考えを持っていたのではないと思います。例えば、僕がお世話になった元駐在員の方はこのような風潮をたいへん嫌っていました。

しかし、「取材に基づいた雑誌特集が発表された際には、南アの日本企業から抗議が殺到した」というエピソードからは、当時の日本企業が持っていた南アに対する相場観はおおよそこのようなものだったのだろう、との推測が成り立ちます。

アパルトヘイトが撤廃されて10年以上が経過した現在でも「黒人の連中は……」などの発言を耳にすることがあります。一部を見て全体を決めつける。「なぜこうなっているのか」物事の背景や本質を考えずに目の前の状況だけを見て物事を判断する。残念ながら、この風潮は完全にはなくなっていないようです。

著者は、取材を通して出会った南アの人々から、厳しい状況下でも失われることのない輝きを感じたといいます。なぜ、このように感じ方が大きく異なるのか、そんなことも考えながら読んでもらいたい一冊です。

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本日の一冊

日本のフォトジャーナリストとして初めてアパルトヘイトの他、南アフリカ共和国を訪れた著者による現場レポート。アパルトヘイトの日常の光景とそこに生きる人びとの真実の声と姿を伝える

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いま、南アには新しい風が吹いている。人種間の経済格差など問題はまだ多いが、新しい国づくりに一途に向かっている。アパルトヘイトの苦悩から脱し、「虹の国」をめざす人々の姿を伝える。

黒人初のマンデラ大統領が誕生しアパルトヘイトが廃止された新生南アフリカ。アパルトヘイト時代に出会った少女マギーをさがしに南アフリカを再びおとずれた著者が、南アの子どもたちの生活や教育など、現状を鋭く描く。

今、南アフリカ共和国で起きていること、それは肌の色が黒いという理由での”人種隔離政策”。住居も、学校も、駅や郵便局など公共設備も白人とは別べつ。そのアパルトヘイトの長い歴史、仕組み、著者が南アでの取材を通して伝える過酷な現状、子どもたちの生活、廃絶と自由へのたたかいの日々、そして将来を鋭く追求する。

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